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パルコ・プロデュース「ツインズ」鑑賞記

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※本記事掲載時点で東京以外での公演がまだあるため、鑑賞予定で、事前情報を遮断したい方は未読をお薦めします。

俳優にして劇作・演出家の長塚圭史と、個性派俳優の古田新太がタッグを組み、第13回読売演劇大賞優秀作品賞を受賞したのが2005年のこと。
10年後に、再び二人がタッグを組んだ作品は古田が長塚に「家族のイヤな話を」とリクエストした、ある家族の物語。

寒々とした海の情景が広がり、波音が聴こえる暗い舞台で、何もない空間で一心不乱にピアノを奏でる、一人の女。
やがて周囲が海辺の家のダイニングとなり、その家の住人とおぼしき者たちが姿を現す。

料理好きで、陽気な男(中山祐一朗)。
常に何かに脅える神経質そうな若い男(葉山奨之)と、年上の妻(石橋けい)と、その子供の双子。
大らかで、落ち着いた風情の初老の男(吉田鋼太郎)。
その家の持ち主である寝たきりの老人の世話をする、美しい女(りょう)。
そこへ、老人の息子である中年の男(古田新太)が娘(多部未華子)を連れて現れることから物語は始まる。

一見すると、ごく普通の日本の家族の風景だが、食べものや水、空気が何かに汚染されていて、富裕層が海外に逃げ出しているという、重苦しい終末感が漂う中、極めて日常的でありながら、恐ろしく非日常的な家族の情景が綴られていく。

序盤は笑いの要素を一切封印し、バットを振り回しながら、自分なりのやり方で娘を守ろうとする不器用で粗雑な父親を演じる古田は終盤に向けて、すべてを受け入れ、得意の飄々とした味わい深い芝居で笑いを誘う、剛柔織り交ぜたベテランの味わいで魅せてくれる。兄役の吉田との張りつめたやり取りも実に見応えがある場面。
家の外からやって来て、父親より先に現実を受け止め、葛藤を抱えながらも順応していく娘役の多部が、今作でも自然体で、狂気と現実の狭間に生きる難しい役柄を演じきっている。

食べもの、水、空気とまっとうに生きる縁を失いながら、遂には電気も無くなった状況で、様々な確執の果てに家族が幸せな食卓を囲むラスト。
人智を超越した、生(あるいは死)を司る存在と思しき、りょうが演じる美しい女が、全員の命の象徴とも思える燭台の炎を揺らしながら、暗闇の中で舞い、その淡い炎が海に流された異様な双子の姿を浮かび上がらせ、幕を閉じる濃厚な終末感に満ちた作品。

近未来の世界を描き出しているようにも思われるが、そこにあるのはむしろ、既にあるものの誇張や強調であり、あらゆる意味で、最早失われてしまったものたちが舞台上にあるのだろうと、強く考えさせられる現代の寓話だと感じた。
重いテーマだが、生半可なやさしさを寄せ付けない、ある種の美が感じられ、鑑賞後に深い余韻を残す。

舞台上から美味しそうな料理のにおいが漂ってくるため、著しい空腹状態での鑑賞だと辛いかも知れないというのは余談。

(NAS)

PARCO PRODUCE
ツインズ TWINS
2015年12月6日 (日) ~2015年12月30日 (水)
PARCO劇場

作・演出:長塚圭史
出演:古田新太 多部未華子 りょう 石橋けい 葉山奨之 中山祐一朗 吉田鋼太郎

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Stage

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