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魂の葛藤を静と動の肉体表現で刻む~森山未来「ユダ、キリスト ウィズ ソイ」感想

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2015年10月10日から12日の3日間。俳優・ダンサーの森山未来が、2014年の夏、ダンス留学先のイスラエルでイスラエル人ダンサーと共作したダンスパフォーマンスが上演された。

会場は横浜の「HONMOKU AREA-2」と名付けられた、元シネマコンプレックス。「戦後から1982年まで、米軍のベースキャンプ地として接収されていたために、ジャズクラブやダンスホール、映画館があり、当時のアメリカ文化が席巻していた場所」(Dance Dance Dance@YOKOHAMA2015総合ディレクター佐藤まいみ氏、文)であり、現在はスクリーンや客席も取り払われ、試験的にイベント目的のスペースとして運用されているビル内に設けられたステージ。

椅子が取り払われた客席は、傾斜をそのまま活かした雛段となっており、各々の段にクッションが置かれた形式。
その前方に据えられた、元はスクリーンがあったスペースに舞台が設けられているが、プロセニアムアーチはあるものの、緞帳や袖幕は一切ない。

舞台上には下手に板材を組み合わせたパネルと、手前からパネル上部に繋がる階段と、天井からいくつかの電球が吊られただけのシンプルな舞台美術。

今回の演目は太宰治の短編小説「駈込み訴え」をベースに、森山とエラ・チホルドが作り上げたダンスパフォーマンス。台詞は随所に最小限あるものの、時として意味をなさないものもあり、バックには音楽家の蓮沼執太の生演奏が流れ、演者二人の肉体表現と絶妙に絡み合う。

シンプルな舞台上で、心から信じていた存在への愛像ないまぜになった男の葛藤を、息の合ったコンテンポラリーダンスで森山とエラが紡ぎだしていくこの作品は、上演時間こそ1時間にも満たないが、鍛え抜かれた両者の卓越した身体表現によるパフォーマンスで、鑑賞中、息が詰まりそうになるほどの緊張感に満ちている。愛し、慕う者への激しい感情の起伏を薄っぺらい言葉ではなく、ダイナミズム溢れる肉体が存分に語りかけてくるのを体感するにつれ、鍛えられた肉体とはここまで雄弁になるものかと感嘆した。

時に激しく、時にやさしく、ぶつかり合い、絡み合う魂と化した二人の肉体が表す感情が辿り着く果てにあるものとは、なんだったのか。
息詰まる葛藤の末に深い余韻を感じる、静謐なラストが印象深い。

森山と一心同体とも言える絶妙な掛け合いを見せたエラ・チホルドは2013年に森山が主演したミュージカル「100万回生きたねこ」のクリエーションにも参加しており、昨年からの共同作業により、クリエイター、表現者としての両者の信頼が強い絆となっていることが、作品への厚みに繋がっているのだろう。

初演が昨年の9月で、以来、各地で数度上演される度に表現方法が見直されているこのダンスパフォーマンスは、深化(進化)、発展する自由度の高さが、そのまま、様々なチャレンジを続ける出演者たちの生きる姿勢そのものと言えるように思われる。

森山は先日の舞台『プルートゥ PLUTO』での素晴らしい演技も記憶に新しいが、この先も漫画家の荒木飛呂彦原作『死刑執行中脱獄進行中』が控えており、そちらも今から期待される。

(2015/10/15 Thu Written by NAS)

Dance Dance Dance@YOKOHAMA2015参加作品
『JUDAS,CHRIST WITH SOY』
ユダ、キリスト ウィズ ソイ~太宰治「駈込み訴え」より~
2015年10月10日(土)~12日(月・祝)
横浜・HONMOKU AREA-2
企画・共同制作・出演:森山未来
演出・美術・振付・出演:エラ・チホルド
音楽・演奏:蓮沼執太

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Stage

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